霧屋敷と二つのオブジェのこと
昨日紹介したブドウ畑のすぐ近く。Rue de l´AbreuvoirとRue Girardonの二つの通りがぶつかった交差点にそれは建っている。
「霧屋敷」。
『地球の歩き方』には出ていない。
Rue Girardon13番地、木々の生い茂った小径に沿って建っている18世紀の建物。
詩人で小説家のネルヴァルは1846年、ここに住み、19世紀半ばのこのあたりの模様を牧歌的に書いている。
「ローマ人支配の時代には、アルジャントゥーユやシュレンヌと競い合ったという有名なモンマルトルのワイン。そのワインを産み出した最後のブドウ畑が隣にあったので、それを買おうと考えたら、十年前なら三千フランで手に入ったと思われるのに、今日では三万フランだという。ここはパリの郊外では一番景色のよいところだ」
ところで、この屋敷の前の広場の隅に女性の彫像がある。
記憶にある名前だったので写真だけ撮っておいた。そして帰宅して調べてみると、それはフランスの有名な歌姫、ダリダであった。この近くのアパートに住んでいたという。プレートには、
YOLANDA GIGLIOTTI
DITE
DALIDA
CHNTEUSE COMEDIENNE
1933-1987
と刻まれている。とても整った顔立ちの人。アランドロンと歌った「パローレ パローレ」という歌声は、私と同世代の人たちには懐かしい歌声である。
エジプト生まれのイタリア人で「ミスエジプト」に選ばれ映画に出ていた。後にフランスに渡り、映画の仕事を探したが見つからず、歌のオーデションを受けて歌手としてデビュー。ヒット曲は多数に及ぶ。
恋人が自殺するという悲劇が3回おこり、3回目には自分まで自殺してしまった。
そんな悲劇の歌姫だった。
最後にもう一つのオブジェがその近くの広場にある。
日本でも劇団四季で有名な「壁抜け男」。
ギャラリーたちは男にばかり気を取られていて、右上に出ている男の尻に気付く人が少なかった。