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一景一話

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【一景一話】 ~心に残る景色との出合いと食の愉しみ~

人類の歴史を貫く『論語』一人語り (3) 君子不器

人類の歴史を貫く『論語』一人語り (3) 君子不器

本日は次のたった4文字の言葉を吟味してみよう。

子曰、君子不器。(為政第二)

「君子は器ならず」
政治を執行する君子というものは、単一の機能(役割)に限定された「器(専門家)」であってはならず、幅広い視点(教養)と自由な発想を持って社会や情勢を見極められる人物(有徳者)でなければならない。

つまり、経験や既成概念に固執せず、その時の状況や情勢などを客観的に認識し、常に柔軟な思考で、分析や行動をすることに気を配れば、正しく判断ができ、新しい発見もあり、結果的に成功に辿りつけるという。君子(為政者)というのはこのような資質のある人間でなければいけないという。

人類の歴史を貫く『論語』一人語り (3) 君子不器_e0297347_003530.jpgしかし、荻生徂徠はこれを「君子なる者は民に長たるの徳あり。器を用うる所以の者なり」(君子者長民之徳。所以用器者也)といい、「器物を使いこなす働きのある人間である」とした点で、上記とは異なる解釈を示している。つまり、自分が器になってしまってはだめで、その器を自在に操ることができるような人間でなければならないとした。

また、次のような解釈もできる。
有徳者というのは、決められた枠の中でしか判断できないような (「我(が)」から抜け出せない)者ではいけない。自我という器の外枠を取り払えることができれば、どんなものでも受け入れることのできる大きな心を持つことができる。この心こそ、機に臨み、変に応じて形を変えることのできる真の器であるということである。
ただ、この「我」を取り除くことは非常に難しい。この 「我」 こそが明代の儒学者王陽明のいう 「心中の賊」 (山中の賊は破るに易く、心中の賊は破るに難し)であり、 「我」 が自分自身の大敵であることを知って、日々の生活の中で、この大敵と向き合っていかなければならないのである。

だれにとっても最大の敵は自分自身である。
Every man is his own worst enemy.


(了)
by doitsuwine | 2015-05-19 20:05 | 生活 | Comments(2)
Commented by 渡辺洋之 at 2015-05-19 21:26 x
王陽明まで出てきましたね。
陽明学の入門書「伝習録」の題名も「論語」から。
仮名論語P3
吾日に吾が身を三省す。
〜【習】わざるを【伝】うるか。

今朝の山日新聞に論語教室募集記事が掲載されました。
http://goo.gl/BlGeQt
Commented by doitsuwine at 2015-05-19 22:30
洋之さん(^^)/~~~
「伝習録」・・・習い事をする者にとっては良い言葉です。
三省堂、有隣堂、台湾には真善美出版なんてのもあります。
私は日々仕事に目一杯であり、三省どころか一省もできませんし、哲学も自問自答もする暇ありません。
だから京都や海外でやります(^^;)

by doitsuwine